ごめんなさい

2ちゃんねるなんかの漫画関係の板、それも描き手や志望者が書き込むようなスレをのぞくと、たまにエロ漫画論議がおこなわれてることがあります。エロ漫画の魅力について語りあう、というのではなく、成年向け漫画にしろ、青年誌のお色気担当漫画にしろ、エロを描くのってどうなのよ?ってな話です。そういう展開になると「おまえらエロ描いて恥ずかしくないの?こういう漫画描いてますって親に見せれるの?」というようなコトを言う人がでてくるんですよ。愚かな質問だと思いますが、そういうことを言いたくなる気持ちはわからなくはない。
僕は、直接そういう質問をされたことは無いですが、もしされたとしたら、胸をはって答えますね。「恥ずかしいですっ!親には見せれませんっ!」と。
実際、現在は実家に両親と三人で暮らしながら漫画を描いておるんですが、両親には漫画を描いてるとは言ってますが、どんな漫画かは言ってないですし、描いた漫画を見せることはありません。
この問題は僕の中では、「世間体と倫理は別」ということで合理化されています。世間体的に恥ずかしいし、世間体的に無駄なトラブルを避けるために隠すべきだが、倫理的、道義的にはまったく問題無い、と。全裸で繁華街を歩くのは世間体的には恥ずかしいことだが、倫理的には問題ないのと同じです。あ、これは犯罪か。「世間体と倫理は別なんだよっ!」炎尾燃が言っても違和感無い、よい台詞です。
5,6年前に実家に戻ってきたんですが、当初から母親は僕の描いてる漫画の内容には興味がないという態度でした、少なくとも表面上は。そもそも漫画には興味ないというのもあるけど、もしかしたら母親の勘が、下手に踏み込んだらお互い怪我することになる、と告げていたのかもしれません。
一方、父の方はその辺の空気を読むのは苦手なので、息子がどんな漫画を描いているかけっこう興味があるらしく、何かのひょうしに聞いてきます。「おまえあれか。どっかの新聞に4コマのやつ描いてるのか?それとも政治風刺みたいなああいうのか?」とか。なんならうちで、おまえの描いてる新聞とろうか?さらにはご近所にも布教しようか?という勢いです。わおっ。
「お父さん。漫画というのは、新聞以外にもいろいろなのがあるんだよ。まあ、そのうちに機会があれば教えるよ。」なんつって、ごまかしていたのでした。が、しかしやがて予想外の方向からほころびが。当時は、まだサンデーGXで「デス・プリ」という漫画を連載していました。GXの担当さんには、僕宛の郵便物の宛名は本名にしてくださいねと頼んでいたんですが、年末にきた小学館の忘年会の招待状の宛名には"吉田蛇作様"とペンネームが。忘年会の招待状出すのは、GX編集部とは違って、全雑誌分をまとめて出す部署があって、そこまで話が通ってなかったんでしょうね、たぶん。
この招待状をおそらく父はチェックしてしまったんでしょう。ああ、息子はこんなペンネームで漫画描いてるのかと。それからしばらくして、父がデジカメ用に使用してるPCの様子みるためか何かで、父の部屋にいったところ、ふと見ると父の本立てに「デス・プリ」一巻と二巻が。

「…あ〜。その漫画…。買ったんだ…。」「うん。買った。…」お互いの出方を伺うかのような短い沈黙の後、話は何事もなかったようにデジカメの話題に。まあ「デス・プリ」は成年向けではないものの、バカ漫画だし、すぐにおっぱいポロリするような漫画だし、父はかなりショックだったんでしょうな。それからは父が漫画の話をふってくることはなくなりました。その後「デス・プリ」の三巻も出たんですが、それが父の本立てに並ぶこともありませんでした。
しばらくして、母から聞いたんですが、父は「○○(僕のこと)は、自分の描きたいものを描けるようになるまで、とりあえず日銭を稼ぐためにああいう漫画を描いとるんだな。」と、言っていたらしいです。昔の映画監督が日活ロマンポルノなんかを経て、自分の撮りたい映画を撮るようになった的なイメージなんですかね。母は「そんなに無理して嫌なもの描いてるの?いっそやめて、やりたいことに挑戦したら?出来るだけ協力してあげるから。」とか、言ってくれるし。いい話だな〜。
まあ、成年向けで描いてたのが地元の本屋に売ってなくてよかったと思うべきか。しかし、ペンネームがばれた以上、やがてはすべてばれるのは避けられないかもしれない。父は「おまえ蛇が好きなんか?」とか言っとるし。しかしまあ、ネットで自由に検索したりする人間ならともかく、漫画に興味無い年寄りだし、僕の漫画に対する興味も薄れたみたいだし、ペンネームを知っても、そこからこれ以上の情報を引き出すことはないかなと。
と、思ってたら、父が今度は「インターネットやりたい」と言い出しました。デジカメ用にPCをいじるようになってから、NHKの中高年向けのパソコン入門番組なんかを見て、インターネットをやってみたくなったらしいです。「インターネットで、なんか言葉いれたらぶわーって、いっぱい出てきてた。あんなのがやってみたい。」と。「ああ、それは検索エンジンていってね…」。まずい。NHK sucks!
すでに光回線はきてるので、ルーター買って来たらすぐにでも父のPCもインターネットで検索し放題!なんですけど、「お父さん。インターネットてのはけっこうこわいんだよ。ほら、コンピューターウィルスって聞いたことあるだろ?常に悪意の第三者が…」なんていいつつ、引き伸ばしてました。でもまあ、せっかく年寄りインターネットやりたいて言ってるんだからやらせてやりたいし、父のPCの使い方見てると、検索エンジンでさえ使いこなせないような気がするから、いいかなと思い、結局のところ父のPCもオンラインになりました。
結論はというと、インターネットに接続されたことで満足してしまい、今では価格ドットコムでカメラ関係の値段を見るのと、ヤフーでプロ野球のニュースを見る以外の使い方はしてないようです。ふぅ。
まあ、しかし実は、僕が気づかないだけで、検索エンジンを駆使して、吉田蛇作情報をすべて知ってしまっているのかもしれません。このブログも実はひそかに読んでいないともいいきれない。

父上様。母上様。不肖の息子でごめんなさい。ひとつだけ言わせてください。僕が、エロでバカな漫画を描いているのは、なんと!好きで描いているんですよ!