戦場でワルツを
ツタヤで借りてきた「戦場でワルツを」を観ました。これ完全版と銘打ってるんですけど、不完全版とどこが違うのか、軽くググってみたけどわかりませんでした。まあいいか。
- 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
- 発売日: 2010/12/22
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映像表現として、日本のアニメともハリウッドの3Dアニメとも違って、観たことない不思議な感じでした。パーツがそれぞれ独立して動く感じがちょっとフラッシュのアニメぽいなあと思ったんですが、後からウィキぺディアみたらイスラエルで独自に作られたアニメーション手法で、やっぱり部分的にフラッシュを使ってるらしいです。これがまた渋く幻想的な雰囲気があって、見入ってしまいました。アニメにすることによって、曖昧な記憶をたどっていくというぼわっとしたたよりない感覚が表現されてるんだろうな。そして、最後にすべての記憶が戻るところは現実のニュース映像が挿入されて、生々しい現実感を視聴者に意識させるわけです。まあ、なぜか「大日本人」を思い出してしまったんですけどね。あれはアニメじゃないけど。
内容的には、ドキュメンタリーという重みを除外して、フィクションとしてみたら、やはりオチが弱い感じはしてしまいますね。いや、そういう観方をする映画じゃないとは思うんですけど。ほら、自ら封印した記憶をたどっていくわけだから、最後はよっぽどえげつない記憶が掘り出されるのかなと思ってたら、そうでもなかったというか。自ら直接的に虐殺に加担して手を汚したわけではないんですよ。
くだんのサブラ・シャティーラの虐殺というのはイスラエルが支援してたキリスト教系のレバノン人民兵組織がパレスチナ難民を虐殺した事件で、イスラエル兵として従軍していた主人公はそれを黙認してしまったと。それがトラウマだったわけです。
この映画を観る前の事前情報から、てっきりイスラエル兵として従軍した主人公がパレスチナ人を直接殺しちゃったりしたのかなと思ってて、よくそういう映画をイスラエルで作って公開できるもんだな、と思ってたんですが、まあ基本的にイスラエルは手を汚してないという描写なので、ちょっと腑に落ちるところがありました。日本の場合、南京事件なんかの昔の日本軍の戦争犯罪をテーマにした映画はエクストリームライトウイングの人達がうざいので配給会社が配給しなかったりするので、イスラエルはそういうことないのかなと思ってたんですけど、まあ納得したというか。
後、日本にひきよせての話としては、トラウマすぎて記憶を封印するという話で、思い出したのがあります。京極夏彦さんと近代史研究家の保阪正康さんとの対談の中の一節なんですけど。
保阪 そうなんですよ。それでね、僕は医学システムの評論やレポートなんかも書くから医者からよく相談されるんですけど、八十代で死にそうなおじいさんがいるというんですよ。
京極 ほう。
保阪 四十代の医者が僕のところにきて、もう動けないはずの患者が、突如立ち上がって廊下を走り出すというんですよ。そして、訳わかんないことを言って、土下座してしきりにあやまるというんです。そういう人たちには共通のものがある。僕はこう言うんです。「どの部隊がどこにいって戦ったかというのを、だいたいは僕はわかるから、患者の家族に所属部隊を聞いてごらん」。みんな中国へ行ってますよ。医者はびっくりします。
京極 ひどいことをしてきたのをひた隠しにして生きて来られたんですね。
保阪 それを日本はまだ解決していない。
京極 戦後、個人におっかぶさったものってすごく大きいと思うんです。
保阪 そういう意味で、日本の社会はある種の二重構造をもっているという気がする。それに気づくと、昭和史を調べていてもしんどいですよ。僕はべつに恥部を暴くという意味でやるわけじゃないんですけど。そういう話を聞くことが多いんです。
ええ話やなあ。
- 作者: 京極夏彦
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