メタなギャグなのか、そうでないのか

ツタヤの”ツタヤ独占レンタル!”戦術にまんまとひっかかってしまっている今日このごろです。なんか心の奥でプレミア感を感じてしまっているんだろうな。くやしい。ビクンビクン。
そんなわけでレンタルした映画が「タッカーとデイル 史上最悪にツイテないヤツら」です。以下ネタバレ有り。

タッカーとデイル 史上最悪にツイてないヤツら [DVD]

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この映画、ホラー映画の典型的パターンをパロった、ちょっとブラックなコメディ映画です。森の中でキャンプにきた頭の軽そうな大学生の男女グループが、謎の殺人者に一人また一人と殺戮されてゆくッ!という「13日の金曜日」みたいなパターンを下敷きにしています。主人公のむさくるしいおっさん二人組み(タッカーとデイル)は、森の中に念願の別荘(ぼろぼろの古家)を購入して、そこで休暇をすごそうとやってきます。で、たまたまその付近では大学生グループがキャンプしていまして、その中の一人の女の子が湖で溺れそうになったところを、タッカー&デイルが助けるんですが、それを見た他の大学生は、得体の知れない変質者(ジェイソン的な)が女の子を拉致したと誤解してしまうわけです。大学生グループの中にはやたら好戦的な男子学生がいたりして、やがて誤解が誤解を呼び、おっさん二人と大学生グループの血で血を洗う抗争に発展するのでした。
とまあ、そんな感じの映画です。登場人物がほぼバカばかりで、ゆるい展開の中、大学生が死ぬシーンだけは、本格ホラー映画ばりに残虐に死んでいくブラックな感覚がおもしろいです。僕はこわがりなんでホラー映画はあまり観ないので、パロディネタがどのくらい含まれているかは残念ながらよくわかりませんでしたが、けっこうパロディネタが仕込まれているのかもしれません。


そんな感じで内容的にはまあまあ楽しめたんですが、ひとつ気になった点がありました。

殺人者と間違われるデイルは、デブで髭面のおやじなんですが、見かけによらずやさしい性格で、女の子とまともに喋れない純朴中年。で、最初に湖で溺れて抗争の原因になる女子大生は、見かけで人を判断しないいい娘。バカコメディ映画とはいえ、というかバカコメディ映画だからこそ、最後にこの二人が結ばれるという展開にすれば、映画が安定するし、後味もよくなるだろうし、おそらくそうなるんだろうなと思いながら観てたら、予想を裏切られることなくそのとおりになりました。
それはいいんです。いや、僕としては裏切って欲しかったとこもあるんですけどね。
ただねえ、事件がおわった後、純朴中年は、いい娘な女子大生をボーリングデートに誘うことに成功し、キスなんかもしちゃってハッピーエンド感満載で映画は終了するんですけど、女子大生のお友達の大学生、男女あわせて5,6人くらいは森の中で非業の死を遂げてることを考えたら、イチャイチャしとるこの二人がとうていまともな神経の人間には思えないんですよね。
そこで僕が思ったのは、この終わり方というのは、矛盾があろうが強引だろうが、とにかく最後はハッピーエンドでいい後味!とストレートに考えてそうしたのか?あるいは、そういう「とにかくハッピエンド!」という、ひとつの映画におけるパターンというか考え方を、おちょくるために、つまりメタなギャグとして、あえて強引にハッピーエンドにしているのか?どっちなんだろう、ということです。
ちょっと僕は判断しかねました。まあ、判断しかねる時点ですでに失敗なのかもしれないけれど、自分を振り返ってみると、僕もストレートに描いてるのかギャグで描いてるのか、読者にとっては判断つきかねるような漫画をけっこう描いてるんではないかと。なんかちょっと反省させられたのでした。